生活綴方研究の到達

○「鑑賞に始まり感傷に終わる」「系統化できない」などと揶揄され批判され、時には「赤い教育」だとイデオロギー攻撃にさえされてきた生活綴方が、「書くことを方法として関係を創る教育方法」としてアメリカの初等教育教師とその夫君の言語学者によって本格的に評価されたのが1980年代、そして21世紀に入ってフランスの社会学者たちによって強い関心を寄せられ、このたび彼らの指導を受けた日本人学生の手によって「社会的諸関係(市民的資質)を教室の中で創りあげる教育方法」として学位論文としてまとめられた。
 生活綴方教育について強く関心を寄せ続けてきたぼくにとっては、この上ない悦びの今。ぼく自身が持ち続けてきた生活綴方教育への関心テーマは「学習者主体の参画型教育方法」である。この教育方法が1920年代、高知県の青年教師の中から自然発生に誕生し、やがて、日本全土で支持されていくことになった。東北地方に特殊な教育(北方性教育)だというのが教育運動史の理解とされてきたが、それはあまりにも一面的すぎるということを、アメリカとフランスでの研究で明らかにされたことが、ぼくにはとても嬉しいことだ。教育方法を政治主義的に捉えるあまり、たとえば植民地下での生活綴方教育に、目が届かない研究状況を生み出してしまってきたのだから。
○トトロ & トトロドララ