♪知らない街を歩いてみたい、どこか遠くへ行きたい♪(3) ある老軀者の回想

〔承前〕 「オグジュレ」問題は片付いた。「ドセール」問題を片付ければ、さらに詳細な情報にありつけるだろうか。
 そもそも「ドセール」はこんな文脈の中で現れている。「ドイツのグラドバッハの学校は敷地は立派で、建物はアミヨットによって建設されたもので、我々の古きコレージュ・ドセールのような伝統的雰囲気を有している。」(*この一文は大いなる誤認に基づいているが、そのことについては後に触れることになる。)
 これを見る限り、「ドセール」はあるコレージュの名称である。コレージュは現在はフランスの中学校のことを言うが、古くは中等教育を行う寄宿学校を示した。前稿の、サン=ジェルマン大修道院に学問を求める放浪学生が24時間学問生活をする場が、コレージュ(collège)であった。
 そうすると、これは、「オグジュレ」、すなわち、auxerreにあるのだろうか。市のHPをしつこく閲覧し続け、「コレージュ・ドセール」を探した。が、見つからない。というより「ドセール」のスペルが不明なのだ。ああだ、こうだと、まったく未熟なフランス語能力を駆使していて、ふと、ああ!と思い立った。校名だとの思い込みだから分からないんだな。Collège d'Auxerre!(コレージュ・ドセール)つまり、「オセールのコレージュ」!!
 これでオセール行きの、ぼくなりの課題が見つかった。
 「オセールの中世から近代初頭にかけての中等教育史の史料調査」
 せっかくフランスに出かけるのだから、併せて、2000年から続けている1871年の「パリ・コミューンにおける教育改革」研究のための史料調査」。
 以上を研究課題とし、大学祭で休講となる期間を活用して2004年10月24日から同年11月6日のおよそ2週間、資金源を私費とし、海外出張を願い出た。
 ・・・・2004年10月28日、パリ・ベルシー駅から出発した。急行に揺られて約1時間40分でオーセール・サン=ジェルヴェ駅に着く。窓外はほとんどが壮大な農地光景が続く。いたるところに沼地があり、白鳥が数多く羽を休めている。
 さあ、人生初に降り立つ土地。

 (パリ・ベルシー駅ホーム)