ふらつきが多い

○午前中、粋生倶楽部増尾 通所。フットマッサージ、ペダル踏み、あったか姫、全身マッサージ、棒体操、歩行訓練、ボール挟み、整え体操。火曜日午前中はぼくを含めて4人がサーヴィスを受けている。全員が揃って同じことをするのは、冒頭の検温と血圧測定、最後の15分を使ってやる体操だけ。「器具」「用具」が全員分の数が揃っているわけではない(そうだとしたら、きわめて贅沢な空間となり、かつ無駄でもある)から、誰がどの順番でやるのだろうか、興味深いことだった。ぼくはこれまで、あったか姫を第1にしてもらっていたが、今日はそうではない。ちょっと掴み得た情報では、最初の検温、血圧測定の結果によって、決まる、ということだ。ぼくの今日の血圧はこれまでにない低さ。健康的な低さだそうだが、あったか姫は血液循環を全身くまなくよくし、あとの機能訓練に備える役割を持っているそうなのだ。リラックス効果抜群です。
○左脚がよく上がるようになっている。歩行訓練もスムーズになってきた。しかし、今日はふらつきが多い。所長さんをひやっとさせてしまった。自宅でも、朝から、ふらつきがある。どういうわけなのだろうか。目眩から来るのではないのだが。
○ぼくの青年期論雑記:フランスで1年間の生活を送る前のこと、バリトン歌手・佐藤光政の「壁の歌コンサート」をAさんとともに聴きに行った。Aさんは自分の将来像を掴みかねしていたお嬢さんだった。思春期にすべてのことに抑圧されて自己実現の喜びを味わうことがほとんど無かったという。怨念とも言うべき学校批判は思春期の人格否定に対する健全な感性から産み出されていたし、それは得てして家族に対してもそう向かっていた。Aさんの話を聞きつづけていて、この人が自分の人生行路を自分の意志で掴むことができるようと思い、ぼくはいろいろと「お節介」を焼いた。その一つがえん罪事件の事実を当事者に会って、作られた罪の中で自身を懸命にふり返り、反省し、明日を見ようとしているその事実を体感してもらうことである。ちょうど、ぼくの居住区で「布川事件」の仮釈放(無期懲役刑)のお二人に掛けられたえん罪をぬぐい去ろうという取り組みがなされており、ぼくもその支援者であった。その会合で、日本にはえん罪を掛けられた「事件」が数多くあることを知ったAさんは、さらに深めて知っていきたいと思うようになった。その「布川事件」の被疑者の一人・櫻井昌司が20数年の獄中で綴った詩をぼくの好きなバリトン歌手佐藤光政がコンサートで歌うというのをその場で教えられ、聴きに行ったわけである。その中の一曲「母ちゃん」は会場にすすり泣きが起こるほどに情感豊かに歌い上げられた。

櫻井昌司獄中歌集より「母ちゃん」一部抜粋

母ちゃん あの日 また来るよと 残していった言葉は
昨日のことのように憶えているよ
僕が手錠をされてから いろんな事があったろに
悲しみの晴れる日を待ったろうに
うつむいた背中に 苦しみを背負ったままで
うつむいた背中に 悲しみをこらえたままで
待ちわびて 待ちわびて 逝ってしまった
*****
母ちゃん つぶやけば 風の中に優しい声が聞こえる
母ちゃん 母ちゃん 母ちゃん 母ちゃん
も一度 昌司と呼んでほしい
 
 Aさんは、コンサートののち、自身の進路を明確に定め、そのために人生の道を、それは決して平坦なものではないのだが、着実に歩み始めた・・・。
布川事件はえん罪であることが最終裁判で明らかにされ、櫻井さんらは無実の人となっている。
○佐藤光政 マイ・ウエイ
https://www.youtube.com/watch?v=st8UXLMnXuo